西村陶業は今年、99周年を迎える。セラミック製造をこれほど長く続けている会社は、世界的にみても稀であり、製造におけるノウハウの蓄積は十分、ワールドクラスである。一方で、これまで国内市場のみで活動してきて、市場のグローバル化には遅れをとっている。今後、日本の人口縮小に伴い、どの市場でも国内需要の縮小は予想されるため、弊社においても、海外からの受注獲得、会社のグローバル化は急務である。
5年前、英文HP開設からはじまった海外事業は、小規模ながら受注獲得に成功している。今回は、そんな西村陶業の、海外事業活動の一部を紹介する。
海外での仕事は楽しい
小さな会社でも素晴らしい新素材を開発できる
その晩は、温泉に入る間もなく、会食を行い、さっさと翌朝7時には、ICE(高速鉄道)の駅へ向かった我々は、とある田舎町へ、セラミック同業の、一度だけ見積もりを受けた会社へ向かった。電車に乗ること一時間、車窓の外はずっと麦畑が映っていた。お邪魔した会社は社員数人の小さなセラミックメーカーで、社長が、以前勤めていた大手メーカーがセラミック工場をたたんだことから創業された会社だ。いかにも技術屋という感じの社長さんは、日本からきたアジア人の我々を少し警戒していたが、少し話している間に親近感を感じたのか、だいぶ打ち解けることが出来た。葉巻を分けてもらい、すこし休憩した後、ごそごそと押入れを探って、とある乳白色のセラミックらしきコイルを満足げにもってきた。で、いきなりそれを床にむかって投げ落とす社長さん。我々は驚いた。セラミックは割れ物である。これはセラミックか?と尋ねると、社長さんは頷いた。なんでも、破壊靭性がとても高いセラミック素材を開発できたとのことで、机において、そのコイル状のセラミックを上から押してみると、とてもよくしなって、ばい~ん、共振している。共振が止まるまでにおよそ15秒ほどはしなったと思う。このような社員数名の小さな会社でも、セラミックスの概念を覆すことができるほどの新素材を開発できるのだ。やはり世界は広いな、と感じた。同時に我々も、既存概念に固執することなく、新素材を開発しないといけない。
顔の見えるサプライヤーとして
海外にいる同業社として、お互いに貴重な情報交換はできた。ドイツに行って、ここでもドイツ企業の同業社同士の関係性を知ることができた。「同業者を敵と捕らえるのではなく、協力者として。」 カリンさんが仰ってたことをここでも実感した。
海外出張に、現地ガイド、通訳なしで乗り込むのは、不安だし、とてもエネルギーを使う。なにするにも常に気が抜けないし、コミュニケーションも場合によってはスムーズとは言えない。しかし、真剣に相手の話をきいて、なんとか意見をつたえる態度を見せることは、海外で仕事するには必要なことだと思う。
今回もそう思った。円滑とはいえないシーンもあるが、コミュニケーションがとれないことは絶対ないし、“あなたとコミュミケーションをとりたいのですよ”と意思表示することで、好感を持ってもらえる。
今回の出張をうけて、海外事業の先行きが見えた。それは海外展示会出展である。これまでハードルがとても高かった、海外展示会出展だが、新たなパートナーが出来たことで、初めて可能性が見えた。もちろん、コミュニケーションは完璧とはならないが、参加していくことで慣れていくだろう。海外展示会出展が出来れば、西村陶業の海外事業は新たな局面を迎えることになる。いままで、メールでの新規引き合いを待つ、受動的スタイルであったが、結果的にある程度の数で問い合わせ数が伸び悩んでいる。今回の出張でも学んだが、仕事は人とのつながりから産まれるのであり、未知の国のしらない人の会社に、大事な部品の生産を依頼するのは、無理があるのだ。これまで、注文が来ているのは、驚くべきことなのかもしれない。現実的に、注文を集められるようになるまで、危機感を持って取り組まなければならない。展示会のその日までに、帰国日から、すでに、準備は、始まっている。